河内屋社長ブログ蒲鉾丹右衛門の徒然なるままに…

2025.08.05

同業者の破綻、時代の変化とともに…思うこと。

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※写真は北日本新聞

本日の朝刊に、富山県の西側、新湊大橋のすぐ近くにある「新湊かまぼこ」さんが破産したという記事が大きく掲載されていました。

私のところには、8月1日の夕方には一報が入ってきていましたが、週末には各地のイベントも多く、新聞報道としては少し時間差で世に出たかたちです。

正直、狭い業界ですので、前々から厳しい状況であることは耳にしていましたが、こうして活字で現実を突きつけられると、改めてショックを感じます。

富山県内で蒲鉾づくりを担う仲間が一つ減るというのは、業界全体にとっても、大きな損失です。

新湊かまぼこさんは、「かまぼこチップス」「白えびかまぼこ」「薬膳かまぼこ」などで知られた存在で、県西部を中心に根強いファンが多くいらっしゃいました。地域の食文化と深く結びついた商品であり、特に「細工かまぼこ」は結婚式の引き出物やハレの日の贈り物として、多くの家庭の記憶に残っていると思います。

今回の報道では「贈答用の需要減」が原因のひとつとして挙げられていましたが、これは確かに、結婚式などの縮小や簡略化、ライフスタイルの変化が背景にあると思います。

細工蒲鉾のような伝統商品は、手間もかかるぶん、現代の消費傾向とはズレが出てきているのも事実です。

さらにコロナ禍で、そうした需要が一気に消えた時期があったことは、業界にとっても痛手でした。

ただ、こうした構造変化だけが原因ではないとも感じています。

地方の中小企業にとって、人材の確保、原材料費の高騰、エネルギーコスト、物流、販路、後継者問題…。

挙げればキリがないほどの課題があります。

そこに日々向き合いながら、私たちは経営を続けています。

だからこそ、今回の破綻は決して「他人事」ではなく、自分たちの姿とも重なります。

私にとって新湊かまぼこさんは、ライバルでもあり、仲間でもありました。

ともに蒲鉾を作る者として、また富山の食文化を守る者として、ひとつの灯が消えたことは本当に寂しく、残念です。

だからこそ、私たちはあらためて気を引き締めて、これからも富山の食文化を守り、次の世代につないでいけるよう、誠実に、そして前向きに取り組んでいきたいと思います。

時代は変わっても、「おいしいね」と言ってもらえる蒲鉾を、地道に作り続けていくこと。

それが、今の私たちにできることだと思っています。