2025.11.06
『さつま揚げ』との違いは?揚げかまぼこの歴史やおすすめの食べ方を紹介!
揚げかまぼこは、日本の食文化を代表する練り製品の一つであり、魚のすり身を油で揚げて作られる料理のひとつです。
かまぼこというと、一般的には蒸した紅白の板かまぼこをイメージする人が多いと思いますが、揚げかまぼこは香ばしさとジューシーさを兼ね備えた別の魅力があります。
全国各地で地域色豊かな揚げかまぼこが作られていて、特に九州や四国、東北地方などでは郷土料理としても親しまれています。そんな揚げかまぼこには、長い歴史と文化が詰まっています。
揚げかまぼこの歴史
揚げかまぼこが登場するようになるのは江戸時代中期以降とされています。
薩摩藩28代の当主 島津斉彬が高温多湿の鹿児島県の気候に合わせて保存性が高まるよう揚げ物にしたのがはじまりという説。
また、中国料理の揚げる調理方法が伝わっていた沖縄の琉球料理がはじまりなど諸説あります。
ちなみにその琉球料理の名“チキアーギ”がなまって「つけあげ」に。その後江戸にも伝わり「薩摩藩のつけ揚げ」から「さつまあげ」と呼ばれるようになったと言われています。
(出展:つけあげ 鹿児島県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp))
揚げかまぼこの発展
揚げかまぼこの登場は、油を使った料理が庶民の間でも一般化してきたことと関係しています。
江戸時代初期、油は非常に高価なものであり、調理に油を使うことは贅沢とされていましたが、その後、菜種油などの生産が盛んになるにつれ、天ぷらや揚げ物文化が広がっていきました。
この流れの中で魚のすり身を油で揚げるといった調理にもつながっていったと考えられています。
貯蔵技術がまだ発展していない時代、特に漁業が盛んな九州や四国地方では、大量に獲れた魚を無駄なく活用する方法として、すり身を加工して揚げるスタイルが広がっていったようです。
宮崎県の「さつま揚げ」や、愛媛県の「じゃこ天」、鹿児島県の「つけあげ」などは、まさにこの時代、地域に根差して発展した揚げかまぼこの代表例と言えます。
地域ごとの特徴と名称
揚げかまぼこは地域ごとに呼び名や味付け、使用する魚の種類、具材に違いがあるのが特徴です。
さつま揚げ(鹿児島県・宮崎県など)
代表的な揚げかまぼこの一つ「さつま揚げ」は、白身魚のすり身に砂糖や酒、みりんで甘めに味付けされていて、野菜やイカ、タコなどの具材が入ります。名前には「さつま」とありますが、鹿児島県では「つけあげ」とも呼ばれています。
河内屋の河内屋揚げもこのさつま揚げに分類され、ぷれーん、いかげそ、やさい、紅しょうがの4種類で展開しています。

河内屋のさつま揚げ「河内屋揚げ」
じゃこ天(愛媛県宇和島地方)

ジャコ、いわゆる小魚を骨ごとすり潰して揚げるのが「じゃこ天」の特徴です。魚の風味が強く、食感も独特で、酒の肴やおかずとして親しまれています。
はんぺん揚げ・黒はんぺんフライ(関東地方)
はんぺんは魚のすり身に山芋や卵などを加えたり、混ぜ合わせてふんわりと仕上げたゆでかまぼこで、それに衣をつけて揚げたものが「はんぺん揚げ」や「黒はんぺんフライ」です。静岡県では「黒はんぺんフライ」として、スーパーなどで購入することもできます。
天ぷら(関西・中国地方)

関西地方では、揚げかまぼこのことを「天ぷら」と呼ぶことがあります。いわゆる「大阪てんぷら」は、練り物の総称としても使われています。
揚げかまぼこのおすすめの食べ方
しっかりとした旨味と程よい弾力が魅力の揚げかまぼこのおいしさは、なんと言っても油で揚げた香ばしさにあります。
そのままはもちろん、炙ることで揚げたてのおいしさを再び味わえます。加熱済みの食品なので、基本的にはそのまま食べることができますが、調味料と合わせて食べることでより一層おいしく食べられます。
生姜醤油
すりおろし生姜に醤油を混ぜたもの。さっぱりとしていて、油っぽさを中和します。
柚子胡椒

九州地方でよく使われる調味料で、ピリッとした辛味と柑橘の香りが揚げかまぼことよく合います。
七味唐辛子
温かいおでんや煮物に添えると風味が引き立ちます。
わさび醤油
板かまぼこに合うのはもちろん、揚げかまぼこにもぴったりです。
揚げかまぼこのアレンジ
揚げかまぼこはさまざまな料理に使える万能素材です。いくつかの調理例をご紹介します。
煮物
揚げかまぼこは、煮物との相性が抜群です。大根やにんじん、こんにゃくなどと一緒にだし汁で煮ることで、揚げかまぼこの旨味が全体にしみわたり、味わい深い一品になります。煮込むときは、味が染みやすいように表面をさっと湯通しして油抜きすると、より上品な味に仕上がります。
おでん

揚げかまぼこは、おでんには欠かせない具材の一つです。特に九州地方では、揚げかまぼこの種類も豊富で、きくらげ入り、野菜入り、チーズ入りなどさまざまなバリエーションが存在します。じっくり煮ることで揚げかまぼこの味わいがスープに溶けだすとともに、おでんのだしの旨味を吸収するといったおいしさの相乗効果が生まれます。
炒め物
揚げかまぼこを細切りにして、野菜と一緒に炒めるだけで簡単な一品が完成します。たとえば、ピーマンや玉ねぎ、人参などと炒めて、しょうゆやみりんで味付けするだけで、食感と旨味のバランスが良いおかずになります。お弁当にもおすすめです。
揚げかまぼこ丼
揚げかまぼこを軽く焼いて、温かいごはんの上にのせ、甘辛いタレをかければ、手軽な丼ものに。炒り卵や刻みネギ、刻み海苔などを添えると彩りも良く、ボリュームのある一品になります。
地域ごとの楽しみ方
日本各地には、地域特有の揚げかまぼこの食べ方や種類があります。
鹿児島の「つけあげ」

さつま揚げの本場・鹿児島では揚げかまぼこは「つけあげ」と呼ばれ、甘めの味付けが特徴です。そのままでも美味しいですが、地元では焼酎の肴としても親しまれています。
愛媛の「じゃこ天」

小魚を丸ごと使ったじゃこ天は、魚の風味が濃く、少し炙ることで香ばしさが増します。大根おろしと一緒に食べるのがおすすめです。
関西の「天ぷら」

関西では練り物の揚げ物を「天ぷら」と呼びます。お好み焼きやうどんに入れたり、甘辛く炊いた「おかず天」として食卓に上ることもあります。
保存と再加熱のコツ
揚げかまぼこは、冷蔵で数日保存可能ですが、開封後はなるべく早く食べるのが基本です。冷凍保存も可能で、1枚ずつラップして冷凍すれば、1ヶ月程度保存できます。食べる際は自然解凍してから、フライパンやトースターで軽く焼くと美味しさが戻ります。
河内屋揚げはレンジで10秒、簡単においしくお召し上がりいただけます。
揚げかまぼこは万能食材
揚げかまぼこは、そのままでも、調理しても美味しくいただける、日本が誇る万能食材です。手軽でありながら栄養価も高く、魚由来のタンパク質やカルシウムを効率よく摂取できます。家庭料理にひと工夫加えたいときや、もう一品ほしいときにもぴったりです。地域ごとの個性も楽しみながら、ぜひいろいろな食べ方に挑戦してみてはいかがでしょうか。



