2026.09.26
同じ日に届いた、二つのニュース。蒲鉾業界の厳しい秋に思うこと。

9月25日の日経新聞に、気になる記事が載っていました。
見出しは「海外産『魚油』3.5倍に急騰」。
魚油は、魚粉とともにイワシなどの魚からつくられ、養殖魚の飼料やサプリメントの原料になるものです。国際指標となるペルー産の魚油は、9月上旬時点で1トンあたり8,500ドル。前年同期の3.5倍とのこと。エルニーニョ現象の影響でペルー沖のカタクチイワシが獲れず、国内でも北海道・釧路のマイワシが不漁。魚粉の相場も2010年以降で最高値!
「それって飼料の話でしょ?」と思われるかもしれません。ところが、これが蒲鉾業界にも大いに関係しているのです。
東南アジアでは、本来すり身になるはずの魚が、高値のつく魚粉や飼料向けに回ってしまいます。さらに原油高で漁船が出漁を見合わせ、そもそもの漁獲が減っている。結果としてすり身が減産。
一方、蒲鉾の主原料であるベーリング海のスケソウダラ。資源はあるようなのですが、今年はまとまった型がなく、生産効率も歩留まりも悪い。思うようにすり身が生産されていません。アラスカもロシアも、すり身よりフィレの生産へシフトしています。そこに米国の物価高、人件費高が重なっている。
そして何よりも円安!製品が少ないから世界中で取り合いになり、結果は日本の買い負け。そんな構図が続いています。
秋のスケソウダラ相場は過去にない上昇を見せ、しかも来年まで引きずりそうな気配。6月に日本かまぼこ協会が「緊急事態声明」を出しましたが、状況はあの時よりさらに深刻になっている感じがしますね。蒲鉾業界にとって最大の繁忙期である年末商戦を前に、不安が広がっているのも事実です。
この現状をブログに記録しておこう…そう考えていた矢先の同じ日の夕方、悲しいニュースが飛び込んできました。
宮城県塩釜市の老舗かまぼこメーカー「カネコ橋沼商店」さんが、自己破産申請の準備に入ったという報道です。
1927年創業。「松島笹」や「牛タン笹かま」で知られる笹かまぼこの老舗です。2011年の東日本大震災の津波で本店工場と事務所が全壊し、1年間の休業を経て、2012年4月に本店を新築して再開。厳しい状況を乗り越えて来て、創業100年を目前にしての決断。苦渋の決断だったと思います。
橋沼幸平さんは、このブログにも何度か登場しています。2024年、仙台での全蒲青(全国蒲鉾青年協議会)全国大会で会長に就任。私の煉心会会長としての2期目の2年間は、まさに橋沼会長とともに活動してきた2年間でした。そしてつい2週間前、博多の全国大会で、橋沼さんは全蒲青会長として、私は煉心会会長として、一緒に任期を終えたばかりでした。私はそのブログで「本当にお疲れさまでした」と書いたところです。
この2年間、橋沼さんは全国の若い蒲鉾屋の先頭に立ち続けていました。その胸の内を思うと、言葉が見つかりません。
震災から立ち上がり、14年間踏ん張ってきた会社が、昨今の荒波に呑まれてしまった。決して他人事ではありません。明日は我が身。それが今の蒲鉾業界の偽らざる現実です。
そんな中、業界で急速に注目が高まっているのが「パンガシウス」です。ベトナムで養殖されているナマズの仲間で、通称「バサ」と呼ばれる白身魚です。
河内屋では当面使う予定はありませんが、無視できない存在になっているのは確かです。全国ではすでに使っているところもありますし、富山県内の蒲鉾屋で使われる日も、いずれ現実になるだろうと私は見ています。
実はこのパンガシウス、日本の食卓や飲食の世界ではすでに普通に使われています。皆さんも知らず知らずのうちに、美味しく食べているかもしれません。天然の魚だけに頼れない時代が、もうそこまで来ているのです。
では、河内屋はどうか。
原料の確保には、これまで以上に力を注いでいます。高品質な商品づくりのための設備更新も、先日のボイル冷却装置のようにしっかり続けています。
そして何より力を入れているのが、棒Sの製造です。秋季限定の「蔵仕込み酒粕ほのか」は大好評をいただいており、来年に向けた新フレーバーの準備も着々と進めています。厳しい時だからこそ、お客様に「美味しい」と言っていただける商品を届け続けることが、私たちにできる一番のことだと考えています。
過去にない厳しい秋ですが、年末商戦に向けてしっかり準備して行きたいと思います。


