河内屋社長ブログ蒲鉾丹右衛門の徒然なるままに…

2009.06.11

細工蒲鉾の歴史

  • twitter
  • LINEで送る

富山県蒲鉾組合総会の中で講演会があり、資料をもらったのでここで紹介したいと思います。

「細工蒲鉾」というと、一般には富山県特有の名産品、あるいは越中の生んだ独自の文化と考えられていますが、全国の水産練製品の分布を概観すると、細工蒲鉾や飾り蒲鉾、婚礼蒲鉾、祝い蒲鉾などと称される類似製品の生産地は、必ずしも富山県周辺だけに限られるわけではなく、東北から九州にまで幅広く見られることが分かるとの事。それらは富山を発祥の地としているわけではなく、史資料から考察すると、京都や大坂という上方の食文化の中で生み出された製品がルーツになっており、そのサイズも比較的小ぶりなものであった事が理解されるそうです。

しかし、富山県内ではほぼ全域で慶祝用細工蒲鉾の生産が継続されており、伝統的地場産業として成立し得ているのは、確かに富山県だけであり、このことは、全国に誇るべき事と言えます。また、鯛の形状の細工蒲鉾のサイズが飛び抜けて大きく、細工も丹念であるという点も、富山の細工蒲鉾の魅力であります。

このような富山型の成立は、従来の言い伝えとは異なり、おそらくは大正期以降のことと考えられ、かつ県内で広く一般化したのは、昭和30年代以後のことであったそうです。

それ以降、富山の慶祝用細工蒲鉾は、地場の伝統文化として根付いたとの事。ここ数年、その売上は、急速な伸び悩みを示すようになっていますが、その背景となっているのが、婚礼形式を含む市民のライフスタイルの変容であるという事は、改めて述べるまでもない…という話です。

お話をして頂いたのは、富山大学芸術文化学部 大熊敏之氏。