2026.08.19
ダッチハーバー最終日。工船ノーザン・ジェーガー号と巨大冷凍庫。そしてお別れ。

ダッチハーバー、最終日の朝。
ホテルをチェックアウトする前に、私たちはもう一度、あの岸壁へと足を運びました。先日、オーシャン・ローバー号が停泊していた、あの岸壁です。
そこには今度、ノーザン・ジェーガー号(NORTHERN JAEGER)が、左舷側に着岸していました。オーシャン・ローバー号が右舷側だったのとは、ちょうど反対側です。
このノーザン・ジェーガー号も、オーシャン・ローバー号と同じく、アメリカン・シーフーズ社の工船です。実は河内屋にとって、アメリカン・シーフーズ社のすり身は、たいへん馴染み深いもの。ですから、この船にも、どこか親しみを感じながらの再訪でした。
さて、この日まず案内していただいたのは、アメリカン・シーフーズ社が所有する、冷凍庫を含めた大型倉庫です。オーシャン・ローバー号編で「また後で見学させていただく」と書いた、あの巨大な冷凍庫が、いよいよ登場です。
第一印象は、とにかく「デカい!」。船からは、オーシャン・ローバー号のときと同じように、あの見慣れた20kgの箱(冷凍すり身)が、勢いよく積み出されていました。
この大型倉庫、興味深いことに、自社製品だけでなく他社の製品も預かっているのだそうです。つまり、この地で倉庫業も展開しているということ。いろいろな船が順番にこの岸壁へ着岸しては、製品をこの大型冷凍庫に保管していくのだといいます。
面白かったのは、これだけ最先端の設備が並ぶ中に、ちゃんとアナログのボードが使われていたこと(笑)。なんだかホッとするような光景でした。

漁の規模が規模ですから、製品の数も、それはもう半端な量ではありません。世界へ向けてコンテナで運び出す際にも、こうして一旦この場所で預かってもらえるのは、大きな利点でしょう。とはいえ、ここが製品でいっぱいになってしまうというイメージではなく、入っては次々に出荷され、シーズン中はフル稼働、という様子でした。

倉庫を出て、改めて岸壁に立つと、ノーザン・ジェーガー号の大きさを、その身で実感します。そして、隣に停まっていたコンテナ船の、これまた大きいこと。とにかくデカい。どこまでもデカいのです(笑)。
そして、いよいよノーザン・ジェーガー号の船内を見学させていただきました。
オーシャン・ローバー号と比べると、船内の通路や、機械設備の配置などに、明らかに余裕を感じます。オーシャン・ローバー号が「工船の中でいちばん小さい」船でしたから、その差なのでしょう。設備は本当に綺麗で、よく整備されていました。
思えば、この視察を通じて、私は何度も同じことを書いてきました。どこも本当に、整備が行き届いている、と。とりわけ洋上のチームは、洋上でトラブルが起きないようにと、その意識がなおのこと高いのかもしれません。
この段階まで来ると、さすがに私たちも、設備の流れや工程がだいぶ分かってきています。それでも船内の迷路感は、やっぱりすごい(笑)。一人では、絶対に目的地にたどり着けませんし、そもそも船の外にも出られません。
デッキにも上がらせていただきました。……やっぱり、宇宙戦艦ヤマトです(笑)。もう、この一言で説明がついてしまいます。

オーシャン・ローバー号編でも書きましたが、この最新鋭の設備を駆使して指示を出すキャプテンの重責は、相当なプレッシャーだろうと思います。
一つ、不思議に思っていたことがありました。荒波の中、これだけ揺れる船体で、安定した稼働率で製品ができるのだろうか。揺れる中で、機械は正常に動くのだろうか。船員の皆さんは、頭をぶつけたり転んだりで危険ではないのだろうか、と。
ところが、聞けば、そもそも揺れることが大前提で設備が計画されているのだそうです。そしてキャプテンも、船内の環境のことまで考えて航行しているとのこと。よく見れば、テーブルの角は丸くなっていますし、機械設備も、要所要所がぶつかっても大丈夫なように、丸みをつける工夫がされていました。一度に大量のスケソウダラを船内へ取り込める設備も、品質も温度管理も、実によく考えられています。

現段階では、まだSAは作れていないようでした。ですから私、「ぜひ、作ってください!」と、しっかりお願いしておきました(笑)。
改めて、こういう船が、こういう設備が、そして乗組員の皆さんが、このベーリング海で日々活動して、フィレやすり身を作っているのだと実感します。
ノーザン・ジェーガー号もまた、製品の荷下ろしと同時に、次の航海に向けた食料など、さまざまなものを積み込む作業が進んでいました。次の航海の安全と、すり身の製造が進むことを祈って、私は船を後にしたのでした。

その後は、急いでホテルに戻り、チェックアウト。
ホテルの送迎車で、ウナラスカ空港へと向かいます。おそらく私自身、この空港に来ることは、もう二度とないだろう。そう思いながら、名残惜しく空港の施設や周辺を見て周りました。とはいえ、なにせ小さな空港ですから、10分もあれば見終わってしまうのですが(笑)。

すると、空港には、ユニシーの皆さん、アリエスカ工場の皆さん、そしてウェストワードの皆さんが、見送りに来てくださっていました。
これは、本当に嬉しかった。
たった二日間。けれど、それぞれの現場で受け入れてくださり、言葉を交わした皆さんが、こうしてわざわざ見送りに来てくださる。この旅で私がいちばん感じた「人」の温かさが、最後の最後に、また胸に沁みました。
アンカレッジへ向かう飛行機は、行きのチャーター機に比べれば、ずっと安心感のある機体です。なにより、トイレもあります(笑)。

この二日間の、短くて、あまりにも濃すぎた時間をかみしめながら、私は機上の人となりました。窓から見えるアリューシャンの島の風景を、目に焼き付け、記憶に刻みます。
ここまでは、本当に順調でした…。
まさかこの後、思いもよらぬ波乱が待ち受けていようとは、このときの私は、予想だにしていなかったのです(笑)。

ダッチハーバー、ウナラスカ空港の施設内の雰囲気。

空港の前に雰囲気の良いベンチがあった。



